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レポート2024.04.20何度転んでも立ち上がる、沖縄に生きる多様な登場人物にそれぞれの情熱を込めた『不死鳥の翼』舞台挨拶

4月20日(土)には、那覇市の那覇文化芸術劇場なはーと 小劇場で『不死鳥の翼』の上映と舞台挨拶が行われました。

この作品は、琉球の古都・首里を舞台にした「夢の残像」と「不死鳥の泉」の2つの物語からなるオムニバス映画で、2019年の首里城の焼失から、地域の人々が希望を取り戻していく姿を描いています。

「夢の残像」は沖縄最古の映画館・首里劇場を舞台に俳優を諦め帰郷した男性とその家族や周囲の人間模様をつづるストーリー。「不死鳥の泉」は、首里の瑞泉酒造で働く女性と酒造所のメンバーたちが映画製作に挑み、首里城の焼失を通して新たな一歩を踏み出していく物語です。

上映終了後の舞台挨拶には、主演のAKINAと小橋川嘉人、大城桜子、真栄城美鈴、山内千草、蓬莱つくし、光徳瞬、岸本司監督が登壇しました。

登場人物は表裏一体

主演のAKINAが「本日はお忙しい中、足を運んでいただき誠にありがとうございます」と挨拶すると、会場からは「あっきー!」と温かい声援が飛びます。

映画製作の着眼点、物語の出発点について岸本監督は、「首里劇場を舞台に物語を作ろうと思ったのがはじまりです。調べたら首里城はもう5度も燃えているということで、うちなーんちゅ(沖縄の人々)が転んでも何度でもすぐ起き上がる姿を物語にしようと思った」と話します。本作については「多様性の中の生きづらさから抜けられる映画を作りたい、登場人物は表裏一体だ」と語りました。

第一部「夢の残像」で夢破れた主人公の下地を演じた小橋川は、「僕も挫折したことがあるので。下地ぐらいダメなところもあるのかもしれないです」と自身と役柄に重なる部分があったことを明かし、MCにいじられると「今はしっかり生きております」と笑いを誘いました。

劇中でジェンダーレスカップルを演じた真栄城、山内は演じるうえで意識したことを問われると、真栄城は「逆に意識しないことを意識した。“好きな人”は、男性も女性もそれ以外も関係ないなと思っていた」と話し、山内も「男女関係なく人を好きになることは同じ感情。普通に恋人だと思って演じた」とコメント。

蓬莱は、「自身にとって映画は心や人生を豊かにする存在」だと語り、劇中で自身が演じたさくらが“映画の持つ多様性、寛容”について語るせりふは何の違和感もなく言えたと撮影時の心境を明かします。

沖縄の魅力は美しい景色と人の温かさ

第二部「不死鳥の泉」で主人公を演じたAKINAは、岸本監督と一緒に作品に挑むのは10年ぶりだと話し、監督の書くせりふについて「10年前とはまた違って、何気ない言葉にジーンとくることがいっぱいあって、岸本監督の書く作品が本当に好きなんだなと感じました」と感慨深い様子。

本作で聴覚障がい者の役柄を演じた、ろう者の大城は、手話通訳者の同時通訳を通して、夢に立ち向かうかおるを演じてみて、「夢に挑戦するためには勇気を持つことと心の情熱を燃やすことが大事。もし途中で夢破れても、心の中に情熱があれば、またこれを燃やして夢を見続けられる」と熱い胸の内を明かしてくれました。

53歳で役者人生に花を咲かせた光徳は、劇中でのしろうの決断を振り返り、「やりたいことがあるとかないとか、そういうことはあまり重要ではなくて。常に生かされていることや縁に感謝して、周りの方をリスペクトして生きていくことが大事」と自身の思いを重ねました。

最後に、AKINAから「沖縄の魅力は美しい景色と人の温かさだと感じています。心が変わっていく中で、沖縄という場所で、首里城のように何度燃えても立ち上がっている人たちは心が強い。映画を見て、何か持ち帰っていただけたら作り手にとってこんな幸せなことはないです」と締めくくり、満席となった舞台挨拶は盛況のうちに終了しました。